項目 | 内容 | |
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事業名 | 難治性疾患実用化研究事業 | |
研究課題名 | 遺伝性QT延長症候群における心室細動に対するl-cis-diltiazemの抑制効果 | |
研究代表者名 | 堀江稔 | |
研究代表者の所属機関名 | 滋賀医科大学 | |
研究対象疾患名(または疾患領域) | 先天性QT延長症候群 | |
研究のフェーズ | シーズ探索研究;非臨床試験 | |
研究概要 | 遺伝性QT延長症候群(以下LQTS)は、心電図上QT時間延長と多形性心室頻拍による失神・突然死を特徴とし、本邦で約2-5万例が推定される難治性致死性不整脈疾患である。薬物療法として決定的な薬剤はなく、突然死のハイリスク症例には植込み型除細動器が考慮されるが、対処療法であること、患者には小児が多く侵襲や植え込み後のトラブルの問題もあり、新規治療薬開発が望まれる。LQTSの中で、心臓L型カルシウム・チャネル遺伝子異常によるものは、心臓外の奇形や精神発達異常・自閉症などの合併を伴い予後不良なTimothy症候群(LQT8型)として報告されていたが、最近、我々は、心外症状を認めないLQT8症例群を報告し、新しい疾患概念を確立した(Fukuyama et al. Europace 2014)。このタイプのLQTSは全体の1割程度占めると考えられ少なくない。 我々は、同定した変異チャネルの電気生理学的機能解析を行い、L型カルシウム・チャネル(LTCC)の不活性化遅延によるgain-of-function変化が原因であることを報告したが、この不活性化遅延を改善する薬剤の探索を行い、臨床で用いられるd-cis- Diltiazem(HerbesserR)の光学異性体であるl-cis-Diltiazemが、Peak電流を抑制することなく、不活性化過程を有意に促進することを見出した。現時点でLTCC不活性化を促進する薬剤として、Yazawaらにより、Roscovitine(CDK阻害薬)が報告されているが、高濃度必要なため臨床応用は難しく、本薬剤あるいはそのDerivativesは有望な治療薬候補になると考えられる。また、LQTSにおける重症心室性不整脈の発症にはカルシウム過負荷がベースにあり、delayed afterdepolarization (DAD)が関与している場合があり、本薬剤はLQT8のみならずLQTS全体あるいは細胞内Ca過負荷による重症不整脈に対する新規治療薬にもなり得ると期待される。本研究では、l-cis-Diltiazemの臨床応用を目指し、本薬剤の薬理作用をさらに明らかにすることを目的とし解析を進めており、典型的なLQT8の病像を示したCACNA1C R412M 変異の培養細胞を用いた発現実験で、その作用を詳細に検討した。(Ozawa et al. A novel CACNA1C mutation identified in a patient with Timothy syndrome without syndactyly exerts increased late current of CaV1.2. HeartRhythm. 2018;4:273-27)さらに、本年度は、LTCC不活性化ゲートが障害される2つの変異、このR412MおよびG406Rについて、Stable cell lineを作成し、製薬企業研究所とタイアップして、すでに上市されている薬剤を含め、Diltiazemと同様の作用を有していないか検討しており、8月末に大阪で行われる第4回DSANJ Bio Conference’19に参加し、興味を示してくれている5つの製薬メーカーと直接、研究内容を提示し、相談する予定である。幅広い薬物ライブラリーを有するメーカーとのタイアップを希望している。 最後に、L型カルシウム・チャネルは、心臓のみならず、中枢神経にも発現し、その作用の変調は、うつ病や自閉症スペクトラムなどの疾患発症とも関連することが示唆されており、あらたなシーズ薬物として、広く候補薬物をスクリーニング中である。 | |
レジストリ情報 | ||
なし | ||
バイオレポジトリ情報 | ||
なし | ||
検査受け入れ情報 | ||
なし | ||
担当者連絡先 | ||
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